静岡県掛川市/しばちゃんランチマーケット 柴田佳寛

柴田佳寛

静岡県掛川市/しばちゃんランチマーケット

そだてる学科 家畜学類

静岡県掛川市で、牛舎・牛乳工場・直売所であるカフェレストランを持ち、より安全でおいしい牛乳を地元でつくり続ける「しばちゃんランチマーケット」の代表。父の代から始めた畜産業を継ぎ、自分たちの手で大切に作ったものを、自分たちの手で届けるということに徹底。地元の人々から愛され、遠方から訪ねてくる人も増えている秘訣は、地元・掛川と牛たちへの大きな愛情です。

プロフィール

掛川で、やりたいことをやる。

生まれ育った静岡県掛川市への愛情が笑顔ににじみ出る、「しばちゃん牧場」の柴田佳寛さん。牧場や牛舎で大切に育てた牛のお乳を牛乳工場で加工し、新鮮なジャージー牛乳やソフトクリームを「しばちゃんランチマーケット」で直売するころまで手がけ、より安全でおいしい牛乳を地元でつくり続けています。
お話を伺ってみると、ただ“家業を継いだ”ということにとどまらず、並大抵ではない地元への情熱が柴田さんの原動力となっていることが分かりました。さて、柴田さんはどのような道を辿って現在の姿にたどり着いたのでしょうか?

遊び場から仕事場に

僕は生まれた時から地元・掛川で暮らしていて、全校生徒20人の小さな小学校に通っていました。放課後は山に行ったり、川に行ったり、あとは家の手伝いもけっこう好きでやっていました。うちはもともとお茶とかお米をやっている農家だったんですが、父の代から酪農も始めて、牛舎とか茶畑、田んぼが僕にとっては遊び場のような感じでしたね。
中学時代は市街地にある大きな学校に通って、野球部に入って部活に熱中したり、生徒会をやったり。積極的にいわゆる学生らしい日々を送っていて、ちょっと農業からは離れていたんですけど、高校受験の面接に行った時に、卒業後は何がしたいかっていう質問をされて『将来は農業します!』って即答したってことをすごくよく覚えてます。どこかでやっぱり、家業を継ぐイメージが頭の中にあったみたいですね。自分にとっては、幼い頃からそれがふつうのことだと思っていたんですけど、先生は『なんで?』っていうような反応で(笑)。その時代、かなり不景気だったので進路ってなるとほとんどの人が公務員志望だったんですね。結果的にはその進学校に合格して通ってたんだけど、どうも勉強が出来なくて、その代わりにとにかく自転車にハマっていました(笑)。学校まで10kmあったんですが、それを毎日自転車で通って、休みの日には日帰りで遠征してその10倍の100km走ったり。自然を感じながら体を動かすのは昔から好きでしたね。その時も、農業に関しては家の手伝いを少し、という感じだったんですが、将来自分でやるためには勉強しなきゃなと思って、多摩にあった農業者大学校に進学しました。東京に出て、農家の跡継ぎ30人で全寮制の生活。自分の家は畜産でしたけど、それに限らず色々勉強して、その中で埼玉の金子美登さん(※)の農場に住み込みで有機農法を教えてもらったことがあったんですね。それをきっかけに『有機農法で野菜を作ろう』と思って、卒業後は就職せずに真っ直ぐ故郷に帰って、家を継ぎました。

安全でおいしい“ものづくり”

僕はその頃から『より安全で、よりおいしいものを地元の人に直接届けたい』という思いが強かったので、それを実践しようと心に決めていて。帰ってきてからはもちろん家業である畜産の手伝いもしながら、その時にどうしてもやりたかった野菜・お茶・お米を有機農法で育てることに挑戦して、できた野菜は車で売って回って、自力で届けるということをやっていました。でもやっぱり経営的にはなかなか上手くいかなくて、有機野菜を中心にやるのは3年で諦めちゃったんですね。で、食っていくためには、真面目に牛をやっていくしかないなと思って、10頭だった牛を20頭にして、牛舎の規模も拡大しました。この20頭の時点ではホルスタインだったんですが、実は学生の頃から、牛を飼うならジャージー牛がいいなって思っていたんですよね。それからずっと機会を狙っていたんですが、偶然買えるチャンスがあって、即決でうちに連れて帰ってきました(笑)。ジャージーはお乳の味がおいしくて、直売している商品に使うのは全部ジャージー牛乳にしています。なにより、かわいいんですよ!
僕の家は牧場だったから、牧場で『より安全で、よりおいしいものを地元の人に直接届ける』ことを実現させようということであって、僕のやりたいことはそこにありますね。
とにかく自分で加工して牛乳を売るところまでやりたくて、でもどうしたらいいんだろうってことで、静岡に1軒だけ残ってた小さな牛乳工場にやり方を聞きに行ったことがあったんですが、そこで『お金が掛かるし難しいよ』って言われたので、一回は諦めちゃったんですよね。それで10年くらい、収穫した牛乳を工場に出荷するという形を取ってたんですが、やっぱりやりたかったことと違うなと思って。やりたいことが出来ないなら、牛の飼育はやめちゃおうと切り替えようとしたところに、たまたま『面白い牧場があるから見に行こうよ』って誘われて福井県のラブリー牧場まで見に行ったんです。そこの牧場は、新規就農の松本さんが牛を飼育し、牛乳の加工・商品の宅配と直売所をやっているまさに僕の理想の形で、それを見て僕にも出来るかもしれないと思ってから、早速動き出しました。

掛川の笑顔のために

実際に牛乳工場を作るとなると、色んな規制があるんですね。保健所とか、農林水産省の政策とか。ちょうどその頃、新しく牛乳工場を作る規制がかかってて、農林事務所に相談に行ったら出来ませんよって言われたんですよね。でも農林水産省と駆け引きしてみようって、一緒に策を練ってくれたのが農林事務所の岩澤さんっていう変わり者で(笑)。けっこう苦戦しながら調べ物をしたり、交渉したりと一緒に試行錯誤しながら動いていると、ついに規制緩和のタイミングが来て!そこですぐに牛乳工場の申請をしました。許可が降りてからはすぐ工場を作って、売り場も工場内に併設して。牛乳を加工して、瓶に詰めて、お客さんの家まで宅配をして、土日は直売所で新鮮な牛乳やソフトクリームを販売してね。ついにやりたかったことが出来て、嬉しかったです。岩澤さんがいなかったら、出来てなかったと思います。
18年して、土日だけじゃなく毎日直売が出来る場所にしたいなと思ったので、工場とは少し離れたところに“しばちゃんランチマーケット”っていうレストランカフェを作ったわけです。そこではジャージー牛から収穫し、加工した瓶詰めの牛乳やソフトクリーム、合鴨農法ならぬアヒル農法で作った“ガァガァ米”の米粉でクッキーを焼いて商品にしたり、お餅つき大会をやったり。大事に育てたものを、誰にどう売っていくかってことを考えるのが好きですね。
自分たちでつくったものは、自分たちで手渡す。いつでもお客さんの笑顔が見えるように、お客さんとの近い距離感を保っていく。そんなことを大切にしながら、これからも掛川に住む人のための商売を続けていきたいなと思っています。それが1番、僕のやりたかったことですからね。

※ 金子美登さん…有機農法の先駆者と言われる。

幼い頃から豊かな自然に囲まれ、遊び回っていた楽しい思い出こそが柴田さんの原動力になっているのかもしれません。インタビュー中も、顔見知りのお客さんが行き来するしばちゃんランチマーケットは、地元のみなさんの憩いの場のように見えました。

田舎の小さな牧場に大行列。地元の人々に愛され続ける究極の牛乳づくり

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2017.11.30 START