情報更新日:2018/09/04

  • はじめる学科
  • 農村料理学類

素材から考察するガストロノミーおむすび学

vol.01

おむすびの歴史に見る、先人がアップデートを続けた知恵

講義概要

素材から考察するガストロノミーおむすび学

「おむすび まるさんかく」があるのは、高層ビルやハイファッションの店舗が立ち並ぶ渋谷区神宮前。
この日の開店前も、炊きたてのご飯の香りで満ちていました。私の(お腹すいたぁ〜)という心のつぶやきが聞こえたかのように
「ご飯が炊ける香りって、おかずにしてご飯が食べられるくらいおいしい香りよね」
と声をかけてくれたのは、同店オーナーでおむすび研究家の大倉千枝子(おおくら ちえこ)さん。

準備が整った午前11時の開店と同時に、お客様が来店しはじめました。
職場のみんなのお昼を買いに来た女性、ネットで見つけて来たカップル、「この前来たら売り切れてたから今日は早めに来たよ」というリピーターさんや、いつも電話予約を欠かさない常連さんなど、それぞれが大倉さんのおむすびを心待ちにしているのが伝わってきます。

お客様ひとりひとりにその日のオススメの食材や産地の説明など、丁寧に、しかしマイペースなコミュニケーションを欠かさない大倉さん。そうしているうちに店内の空気はゆったりと流れはじめ、そこが大都会であることを忘れてしまいそうになります。

まるで大倉さんのおむすびが、食べる人それぞれの癒やしのスイッチであるかのようでした。

 

手で思考し、知識を知恵に変えるしごと

大倉さんは毎日、米、塩、水といった基本的な素材から考察し、五感に素直に思考を深化させることを続けています。

「わたしはいつも手で思考しているなと感じます。頭で考えたことを手を動かし、情報や知識を身体を通して咀嚼している感じ。そのレイヤーが自らの血肉となり自分のモノサシとなっていると思うのです」

これまでも各地のフィールドワークを通して、その土地ごとの風土、産物、自然を観察してきた大倉さんは、それぞれの活かし方や働く人々の知恵に触れてきました。

厳しい自然環境でも無農薬のお米を育てる方や、
おいしい塩が生まれる環境を理解したとき、
また、耕作放棄地になりそうな梅畑と生産者さんに会ったときなど、
自然と人との関係を「育む」ことについて、深く考える機会を繰り返してきました。

「自然はダイナミックで、淡々とそこにあります。そのなかで常に変化し、当然毎年の作物の生育状態や収穫のタイミングも異なります。良くも悪くもそれを学び、その経験を私たちが糧として生かしてゆくために知恵が生まれる。自然と調和するのは簡単ではないけれど、手を動かし思考することで知恵が磨かれてゆくのではないかと思うのです」

せわしなく暮らしていると見逃してしまいがちな宝物こそ、実はさほど遠くない、身近にある資源だったと実感し、「豊かさを創造するのは『人』なのだ」と気づいた大倉さん。

「おむすびの基本はシンプルな3つの素材で構成されています。私たちにとって親しみのあるシンプルなこの食べ物は、日本の風土、文化から育まれてきた歴史があります。言うなれば、おむすびはガストロノミーそのもの、ミニマムなカタチと思っています。店で提供している食べ物も同様に、そこから生まれています」

大倉さんの手で作られたおむすびが多くの人に愛される理由は、彼女のそうした思いが人々の気持ちをも満たしてくれるからなのかもしれません。

「おむすびはコミュニケーションツール!」という大倉教授。
本講座では、都市と地方、伝統と創造、社会と自分などのファクターをむすぶ 豊かな価値観を、季節のおむすびとあわせてご紹介していきます。どうぞお楽しみに!

メイン写真

人それぞれ好きな具や形、こだわりや、はたまた思い出など、おむすびに関連した思いを持つ人は多いことでしょう。では、おむすびは一体どのようにしてこれほどまでに身近な存在になったのでしょうか。

この動画の視聴、記事の閲覧には入学が必要です。

無料以外の動画の視聴と記事の閲覧には、新規登録と入学の手続きが必要です。
入学済みの方はログインしてお楽しみください。
まだ入学されていない方は新規登録から入学の手続きを完了してください。

教授写真

大倉千枝子
東京都渋谷区/おむすび研究家

おむすび研究家、「おむすび まるさんかく」オーナー。食の大切さとそこからもたらされる豊かさを意識して以降、国内外でのフィールドワークを通して文化、歴史、風土などの知識を深め、多くの食育ワークショップを展開。2005年には書籍『むすんでみませんか?おむすび。- おむすびの話あれこれ -』(ピエ・ブックス)を出版し、おむすび研究家としての活動を開始する。 2011年、渋谷区神宮前におむすびと自家製の無添加食材を扱う飲食店「おむすび まるさんかく」をオープン。厳選された無農薬米、自らがオーナーとして取り扱う鳥海山の天然塩、ライフワークともいえる梅干しを中心にした梅を余すことなく活かした品々、そして季節の食材を丁寧にサービスする同店は連日にぎわっている(事前予約がオススメ!)。いちばん好きなおむすびは「塩むすび」。

この教授をもっと知る