講義の説明

情報更新日:2018/01/25

大地と繋がる手しごと学

遠藤千恵
神奈川県横浜市 / ties 代表
  • はじめる学科
  • 農村料理学類
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「誰かを喜ばせることができるって人生において最高の喜びですよね。」

凛とした丁寧な言葉遣いで、ゆっくりとやわらかく話してくれた遠藤 千恵さん。やわらかさの中にもしっかりとした芯を感じる女性です。

彼女が代表を務める“ties”は『結ぶ・繋ぐ』と言う意味の英語。

「食をきっかけに、人、大地、もの、ことが繋がり、広がってほしいという想いから“ties”と名付けました。さらにその大きな繋がりの中で、それぞれが連鎖して循環していく未来を共につくっていきたいと思っています。」

彼女が繋いでいきたいもののひとつに『季節の手しごと』があります。

昔に比べるとする人が減ってきている季節ごとに訪れる、梅や柿酢、味噌を仕込むといった手仕事の数々。それらは一人でやるには大変な作業も多く、しんどくなってしまうこともあります。

「昔の人ってこんなに黙々とやってたの?って思うんですけど、紐解いていくと、昔は井戸端や地域に女性たちが集まってみんな一緒にやっていたんですね。誰かと一緒にやると、特に女の人は、まあ口がよく動く。口が動くとなぜか手が早くなってあっという間に終わっちゃう。

昔の人たちはそういう風にご近所同士で集まって、情報交換したり、生活の知恵を分かち合ったりしながら、協力して季節ごとの台所の手仕事をせっせせっせと行っていたのだろうと思います。」

当たり前に継がれてきたであろうそれらは、今の時代、特に都市部においてはすっかり馴染みのないこととなっています。時代の流れと共に生活はとても便利になり、つくらずとも買える、むしろ買うことが当たり前になってるのです。

「生活スタイルや価値観の多様化など、その背景には様々な要因がありますが、地域コミュニティやご近所付き合いの希薄化も手仕事が日常から離れた要因の一つではないかと、私は思っています。一人だと手間も時間もかかるし、そもそも習慣になくてやり方が分からないという人も多いから、なんだかハードルが高く感じてしまいますもの。

季節の手仕事には四季のある日本で健やかに食べて生きるための知恵があり、それぞれが理にかなっているんです。

例えば、夏が始まる前に行う梅仕事。塩や砂糖で浅漬けやジュースにすれば暑い夏に身体の熱を冷ましてくれます。塩漬けして陽の光で干した梅干しは長期保存がきくので、作物の少ない時期にご飯のお供にしたり、殺菌効果や疲労回復効果で1年中重宝するので翌年までの分を沢山仕込んだりするんです。

このように季節に沿って手仕事をしていると、自然の移ろいや身体の変化を知り、それに合った食べ方、暮らし方が自ずとわかってきます。頭であれこれ考えるよりも、もっともっと単純に、自分の身体が大地とつながっているんだということも。

自然の中に身を置かずとも、大地と繋がり、農に近寄り季節に沿って生きる自発的な暮らし。そのきっかけともなる手仕事を共に行える井戸のような場を創り、次の世代にも繋げていきたいと思っています。」

本講義では、普段の台所を舞台に季節ごとに訪れる手仕事を紹介しつつ、その意味と農との繋がりを探っていきます。受講した方を対象に、実際に井戸端会議をしながら手仕事をする会も開催予定です。

手仕事に興味はあったけれど、なかなか手を出せずにいた方、仕込む意味を知りたい方、いつもと違う手仕事をやりたい方。きっと何かのきっかけが掴めるはずです。

流行りを追いかけるのではなく、丁寧な暮らしや心地よい暮らしの表層的な部分だけにとらわれず、本質的なことをみんなで探っていきましょう。その本質を理解した上で選ぶものたちは、きっと今までよりも綺麗に目に映ると思いますよ。

遠藤千恵
神奈川県横浜市/ties 代表

東京生まれ。2015年より、拠点を都内から車で40分の豊かな自然が残る“都会と田舎の間のトカイナカ”な中山(横浜市)に移す。 “身土不二”(人と大地は繋がっている)の考えを大切に、四季折々の野菜が持つ本質的な美味しさと美しさを活かしたケータリング、メニュー制作を中心に活動する。2016年より二十四節気に沿った台所の手仕事を共に行う「手しごとの会」を主宰。 学生時代に、人の心を真に満たすことができるのは同じ人の心だと感じ、サービス業を目指す。客室乗務員を10年続けた後、食の世界へ。 幼い頃に母や家族が自分のつくった料理で喜んでくれたこと、美味しいものを皆で囲んだ豊かな時間を心の内に持ち続け、そんな時間のきっかけとなる食の仕事に携わり、人が幸せになることをやりたいと活動している。 季節の手仕事は保存食や常備食をつくるだけではなく、自然の移ろいに沿うことで身体と大地の繋がりを実感できると広く伝えようとしている。