講義の説明

情報更新日:2018/05/06

地域と育つコミュニティ農園学

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渋谷から田園都市線で2,30分というアクセスのよさから、都心部に通勤するビジネスマンファミリーも住民に多い川崎市宮前区。電車で10分圏内に、ショッピングに便利な洗練されたファミリーが集まる二子玉川駅と、上品で大人な雰囲気のたまプラーザ駅があるので、子育て世代の都会的でアクティブな女性たちにも人気のエリアです。田園都市線が乗り入れる宮崎台、宮前平、鷺沼駅周辺はベッドタウンさながらの人口の多さで、まだまだ都市開発が進んでいる様子ですが、区の南北に伸びる東名高速道路を小田急線側に渡ると景色が一変。畑や広大な庭をもつ旧家が並び、まるで里山のようなのどかな風景が広がります。

この二面性をもつ宮前区で、ひときわ広大な農地をもつ「小泉農園」。我が家は数年前に子育て環境を考え、小泉農園から徒歩5分ほどの場所にあるマンションに引越してきたのですが、「小泉さんとこの野菜はいいよ」と近所でどこからともなくおすすめされる農家さん。「その正体は?」と散歩がてら訪ねると、いつでも門は開いており、老若男女問わず人がひっきりなしに出入りしています。ビニールハウスの前には「STRAWBERRY SHOP」とポップな看板が掲げられていて、ジェラートまで販売しているではありませんか。まるで畑の中のカフェのような場所です。

本講義で教授となるのは、小泉博司さん。現役で畑仕事をする90代のお祖父さま、60代のお父さまをサポートし、見守られながら「小泉農園」をマネージメントする18代目です。オリジナルブランドとして成功させた『わがままいちご』のいちご狩りを看板に、新鮮な野菜を川崎北部市場、セレサモス(JAセレサ川崎)、生活クラブ生協といった大手から地元のスーパーやレストラン、小売店、直売と多チャンネルに出荷しています。お母さま、妹さんが野菜やハーブを使った加工品を、奥さまが焼き菓子を製造されるなど、家族それぞれが独自の農法・味を追求し、「小泉農園」という唯一無二のファミリービジネスを築いています

博司さんは『わがままいちご』の機嫌をうかがいながら、かわさき農業界の青年部でリーダーシップをとり、人と交流し、まちと共に耕す都市農業で「どうもうけていくか?」を次世代の農家に示していきたいと語ります。

「川崎の農業というのは、面積的には大したことなくて、その中でどう経営を回していくか、どうファンを増やしていくかなんです。地方は人がいないけど農地はあって、野菜を作ったり加工して、いかにロットに乗せるかというのが勝負。一方こちらは人はいるけど農地がない。そうなるとロットに乗せる前の施策だったり、どうやって売り上げを上げていくのか。野菜を作って地域の人たちと交流を深めてまちをつくりながら、まちの人たちが求めている形態に農業を持っていくのか。もしくはそのまちの形態に合った農業がまちを作っていくのか。ということが課題ですね」(博司さん)

人が集まる、人に頼られる、地域のプラットフォームとなる農園がいかにしてつくられたか? 地元に愛され続ける秘訣は? 博司さんによって人とつながり、多様性に対応し、時流に乗ってますます発展していく「小泉農園」。1回目の講義でレポートする、地元の農家、飲食店、アーティストが参加し、大学や地域団体を巻き込んで、個人の畑のお祭りでありなが1000人の動員数を誇る「農園フェス」を皮切りに、紐解いていきたいと思います

小泉博司
神奈川県川崎市/小泉農園

江戸時代から続く川崎市最古の農園のひとつ「小泉農園」の約18代目。 90代の祖父が代表、60代の父が現役で畑仕事をする小泉農園でハンドルを握り、オリジナルブランド「わがままいちご」を看板に、旬で新鮮な野菜を川崎北部市場や生活クラブ生協、地元の小売店やレストラン、直売から届けている。畑を舞台にしたお祭り「農園フェス」主催。地元の農家や飲食店、地域団体、大学などを巻き込み、かわさきの農家とまち・人をつなぐ1000人規模の名物フェスとして展開している。いちごの栽培を始めたきっかけは「いちごが嫌いな人はいないから」。祖父・父と共に担当する畑のほか、母・弟・妹が野菜やハーブを使った加工品やジェラート、妻が焼き菓子の製造を開始。地域の相談役も務める。