講義の説明

情報更新日:2019/05/28

地域のHUBになる 農業法人経営学

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長野県上伊那郡・飯島町(いいじままち)。長野県の南部、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷(いなだに)と呼ばれるこの地域一帯は、適度な標高や寒暖差を生かした多様な農畜産業が盛んなエリアです。お米に野菜、果樹。酪農に養豚に、養鶏も……! 海こそない長野県ですが、秋には松茸も豊富にとれるきのこの里でもあり、とにかく一年中豊かな食に恵まれた、“おいしい谷”です。
 
本講座の教授・紫芝 勉(ししばつとむ)さんが代表を務める株式会社田切農産は、そんな伊那谷で2005年に設立され、2010年に株式会社化された農業法人。全国でもいち早く「農業法人」を設立した草分け的存在であり、2011年には「全国優良経営体表彰・集落営農部門」にて最優秀賞にあたる農林水産大臣賞を受賞するなど、その取り組みは大きな注目を集めてきました。

なんとこの法人、紫芝さんが暮らす飯島町田切地区すべての農家・226戸が所属しているのも大きな特徴。地域がまるごと農業法人に属することで、いま日本全国の農家が抱える高齢化の問題や、そこに連なる耕作放棄地、農地管理などの課題解決をめざす──それが、田切農産なのです。

農業法人、と聞くと、どこかビジネスライクな開発型の農業を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、地域で農業を続けてきた人たちによる組織である田切農産のテーマは「持続可能性」

「永続する農業」「環境にやさしい農業」を理念に掲げ、この先の10年も農業を続けていくためのサポートをしたり、環境に配慮した農業で地域の水や土を守りながら付加価値のある農産物の販売を行なっています。一方で、ときに農業そのものよりも農家の負担となる「田畑のあぜ道の草刈り」といった課題も、田切農産では作業グループを結成することで有償で受託。いわば一つの「草刈りビジネス」として運営するなど、地域の課題を法人という組織によって解決しています。

八ヶ岳中央農業実践大学校を卒業後、渡米しアメリカの大規模農業を肌で感じてきた経験をもつ紫芝さん。「豊かに見えるアメリカにも、さまざまな階層があり、貧富の差もあった。けれどそうした壁を、アイデア一つでみごとに乗り越えている人たちにもたくさん出逢えたんだ」と語る紫芝さんのお話しには、新しいチャレンジや失敗を恐れず、アイデアで逆境も強みに変える農業法人経営のヒントがたくさん詰まっているんです。そこで本講義では、地域の課題を解決し、未来へとつなげる理想的な農業法人を10年続けている紫芝教授から、農業法人を発展させ、続けていくためのヒントを学んでいきます。
 
すでに紫芝教授には、続いていく農業法人経営のためのヒントを一つ、お聞きしています。それは、「柱を持ちつつ、“遊び”を忘れない」こと。
 
たとえば田切農産では、米(水稲)と長ねぎを柱としながらも、イタリア人スタッフ(!)のセレクトによるおいしいイタリア野菜の栽培・販売をしたり、直売所直結のハーブ畑でハーブの量り売りをしたり、農産物を使った加工品づくりを積極的に行ったりと、ワクワクするような取り組みが日々、行われています。自社で運営する直売所「キッチンガーデン」を訪れると、珍しい野菜やおいしいジャム、ドレッシングなど、いつでも発見のある商品がずらり。最近では移住希望者も相談に訪れる地域の憩いの場にもなっています。
 
現在売り上げの6割を占めているのは、あくまでもお米と長ねぎ。しかし、そこのみに注力するのではなく、紫芝さんが“遊び”を続ける理由は、どこにあるのでしょう?
 
第一回はそんなところから、講義がはじまる予定です。みなさんどうぞ、お楽しみに! 

(写真:佐々木健太)

紫芝勉
長野県上伊那郡飯島町/田切農産代表

南信州・伊那谷で、代々続く農家に生まれる。1980年、長野県原村の「八ヶ岳中央農業実践大学校」を卒業ののち、研修のために渡米。「ハンディを乗り越えるための工夫」を重ねるアメリカの人々の暮らしに触れ、帰国。81年から父とともに畜産業をはじめ、その後独立。2005年、田切農産の代表に就任。独自の発想で切り拓く先駆的な集落営農の取り組みは、全国の農家や農業団体、自治体等から注目を集めている。2011年度全国優良経営体表彰・集落営農部門で農林水産大臣賞(最優秀賞)受賞。