講義の説明

情報更新日:2018/05/30

おいしいを追求する自然栽培学

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唐澤 秀(からさわ しゅう)さんは、農産物について「おいしい」ことを何よりも大切にしている生産者。それもただ単においしいレベルではない、感性にせまり理性もなく求めてしまうような、唐澤さんの言葉を借りるなら”官能的なまでに”おいしいもの。故に自らを「ただ美食を求める男です」と言い、実際さまざまな国内外の美食に精通しています。

かつて大手の農業法人に所属していた唐澤さんは、仕事を通じて日本の農業の現実やノウハウを学びながら、毎年自らの有給休暇を利用し、欧米各地の農園・牧場・生産工場・加工場など「世界一」と評価される欧米の農家を訪ねる旅を始め見識を深めていました

そんな矢先に出会ったのが、自然栽培の第一人者、木村秋則(きむらあきのり)氏。彼の教えは、その後の唐澤さんの人生にじわじわと影響を与えることになります。土と太陽と水だけで育てる??肥料をやるから虫がくる??
はじめは無農薬・無肥料の自然栽培がマユツバに聞こえたという唐澤さんですが、なぜか心の中には木村さんの言葉がいつまでも残り続けていたとか。

「こんなに気になるならもう自分でやってみよう」

そう決めたとき、木村さんとの出会いからはすでに約1年という年月が経っていました。
しかし、農業法人でお勤めの傍らに始めた畑で、何よりも大切にしたい「味」の良い野菜づくりに成功、その根底にあるものが自然栽培であることを実感します。唐澤さんはそこからさらに2年もの時間をかけ、丁寧に自身の気持ちを固めていき、ついに2008年「鹿嶋パラダイス」をスタートしたのです。

“適地適作”で手間を惜しまず、”適材適所”のチームワークを

「スペインでイベリコ豚の生ハムを作る農家を訪ねたとき、豚の餌にするどんぐりからオーガニックで栽培していました。しかも餌の管理だけじゃない、豚の育成、屠殺、加工、製造、保管、出荷といった全てのチームの担当者がみんな、自分たちの商品や役割について誇らしげに語っていたんです。みんな”自分の貢献が一流の生ハムを作っている”という自信に満ちて、目が輝いていました。
私は『誇りをもった仕事がこんなにも人を輝かせるんだ』と驚き、自分もそんな仕組みをつくりたいと思ったのです。」という唐澤さん。

鹿嶋パラダイスでは、最終目標であるおいしさへの意識をスタッフ全員と共有し、全てのスタッフが最低でも週に一度は畑仕事をすることが常となっています。
そしてその農産物を食材として提供する自然食レストラン Paradise Beer Factoryは、クラフトビールのマイクロブリュワリーとしても事業を展開。サラダのレタス1枚、ピザソースに化けたトマトやバジル、ピザ生地になった小麦もすべて、唐澤さんたちがタネから育てた言わばこだわりの結晶です。彩りも鮮やかなお料理、汗かくグラスに注がれ輝きを放つビール、テーブルに乗るすべてが五感に迫りまくるおいしさだということは言わずもがな。

この講義では、「この世にパラダイスをつくり、関わる人たちの人生をパラダイスにする!」という唐澤さんの過去、現在、未来の話を軸に、広い視野と深い考察力をもった農業を学びます。
どうぞお楽しみに!

唐澤秀
茨城県鹿嶋市/鹿嶋パラダイス 代表

無肥料・無農薬の自然栽培農園「鹿嶋(かしま)パラダイス」代表。クラフトビール醸造家、自然食ビアレストラン「Paradise Beer Factory(パラダイス ビア ファクトリー)」オーナー。 明治大学農学部卒業後、大手農業法人に就職。農業コンサルタントとして多忙を極める一方で、より味が良く、より持続可能な栽培を実現する”何か”を求めて国内外の生産者をたずね続けるなかで自然栽培と出会い独立、2008年5月「鹿嶋パラダイス」をスタート。 現在、田んぼ1町6反(約1.6ヘクタール)、畑は6町歩(約6ヘクタール)にて70種以上の作物を自然栽培し、Paradise Beer Factoryで提供。関東最古の神社「鹿島神宮」の表参道に位置する同店は、神宮の御神水(ごしんすい)で作るクラフトビールの醸造所でもあり、爽やかな味わいのビールも高い人気を誇る。2018年内にはさらに原料の98%を占める自然栽培ビール麦の栽培から始め、全ての素材を自然栽培で作るという世界でも類をみない「自然栽培クラフトビール」を開始。自然栽培を軸に衣食住、エネルギー含めた幅広いものづくりを行う自らを「ただ美食を求める男」と称する。