農ライフマインド学

情報更新日:2019/02/05

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コトを起こすなら、人が集まる“場”を作ろう

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家族や仲間10人とともに淡路島へ移住し“農的暮らし”のためのコミュニティーを作っている菜音ファームMUDO村長。自分たちだけで完結するのではなく、地域やまわりの人たちと協力し合える「場」を作ってきたからこそ、思い描いた農ライフコミュニティーが機能し、ほんとうの意味での豊かな暮らしを実現できています。これから何かをはじめたいと考えている人はなおさら、コトを起こすための「場作り」が重要なカギになるはず。第2回講義記事では、MUDOさんが実践してきた場作りについて考えながら、未来へのヒントを探してみてください。

ただ農業を始めるだけでなく、人との「場」をもつことを意識する

「僕らは東京から淡路島へ移住してきて7年ちょっとですけど、元々知り合いゼロ、来たこともなかった場所からスタートしました。畑を借りたかったけれど、いきなりよそ者には貸してくれないじゃないですか。だから仲間のみんなと産直マーケットの検品係だとか農業、林業、水産業なんかのバイトを4つずつぐらいかけもちして働いていました。

地元の人たちと一緒に働きながら、畑やりたいんですよ〜って言い続けていたら、『じゃあオレ貸してやるよ』という人が出てきて。最初は3畝ぐらいの小さなものだったけれど、その3畝の下に3反の林があって、35年前は畑だったって言うんです。『じゃあおじいちゃん、これ全部きれいにしたらタダで貸してくれますか?』って聞いたら、いいよって言うんで、3カ月かけて整備して借りることができたんですよ。

そうしたら、それを見ていた近所のおじいちゃん、おばあちゃんが、じゃあうちのココもどうぞ〜ってなって(笑)うわぁ、昔の風景に戻ったなぁなんて喜んでもらえて、気付いたら借りている畑が二町歩ぐらいになってたんですよ。今では、うちも借りてくれ、と言われても手が回らない状態です。

ゼロから何かを作り上げていくのは大変です。僕たちも畑を借りるのに3年ぐらいかかりました。コトを起こすためには、やっぱり“場”を作ることって大切なのかなと思います」

「場を作る、たまり場を作ると、人とのコミュニケーションが生まれて、何かコトが起こる。たとえば、これから農業をはじめようと思っている人も、ただ農業をはじめればいいだけではなくて、野菜を作った後、その先どうやって売っていくのかってことになります。人が集まれば売り場もできていく。まずは場作り、たまり場作りからはじめていくってことは、参考になるんじゃないかな、と思います」

農家や移住者がシェアし、手伝い合って、島のオーガニックシーンを盛り上げる

「3年ほど前から“島の食卓”というオーガニックマーケットを開催しているんです。農家が主体となって、淡路島のオーガニックシーンを盛り上げようということではじまったんです。規約を作ってそれに賛同した人とその規約に沿っている人だけが出店OKだよ、というふうにしていて。僕らは農業以外にキャンプ場やコテージなどの宿泊施設があって、週末は石窯ピザのカフェも営業しているから、マーケットにはなかなか出店できなかったんですけど、一昨年から年に2回はうちの敷地内でやることになって、それなら僕らもできるなぁ、と。ここには日除けがないので、12月と5月に開催しています。

今回出店した人たちは、ほとんどが自然栽培やオーガニックの農家。それも半数が移住者なんですよね。このイベントで毎回どんどんつながっていって、スキルをシェアし合っています。『たまねぎこうやったらうまくできるよ』とか、『あそこの竹やぶで竹チップくれるからみんなでやろうぜ』とか。今まで農家は隠して、備蓄して、っていうかんじで、ノウハウや情報をシェアしてこなかったんじゃないかなと思うんです。僕らはどんどん良いことも悪いこともシェアして、みんなで手伝い学び合って、そうするとコトが起きる。それが今、いい流れを作っています」

「このイベントに遊びにきたことがきっかけで、淡路島に来て農業をやろうという人も出てきました。そういうきっかけになっていくためにも“場”が必要なんです。農地も余っているんで、どんどん新規就農者を誘致したほうがいいと思うし、“島の食卓”が、島に移住してきて、自然栽培とかオーガニックとかやっている人の売り場になればいいよね、という思いもあります。今後はEコマースとか、ネットを通して販売していくこともできるだろうし。みんなのコミュニケーションの場、発表の場、僕らはその場づくりができれば、絶対に発展していけると思います」

 

「孤立」ではなく「溶け込む」。地域で愛される場を作る

「今回のイベントでは餅つきをやりました。最近は家で餅つきをするところも少なくなっているから、こどもさんたちがケガしない程度に経験して、これが餅なのか、って知ってもらえたらいいな、と。僕は毎年12月28日に近所の人を集めて餅つきをする家で育ってきたんです。それだけじゃなくてぬか漬けとか味噌作りも身近にあって。それを自分の子どもたちにもつなげていきたいし、今年はお客さんに菜音ファームの“場”に来てもらって、味噌作りのワークショップも考えています。

毎年8月31日の“やさいの日”には、おいしいオーガニック野菜を食べようというイベントもやっています。ミュージシャンを呼んで、農家さんを呼んで。日が決まっているので、毎回週末というわけにはいかないけれど、ちょうど夏休みの最終日になるので、前回は250人も来てくれました。毎回下の道路が大渋滞になって、近所の人にツッコまれる、みたいな(笑)。でも、町内会にも入っていてコミュニケーションがとれているので大丈夫です!集まりにもちゃんと顔を出してますから(笑)。

それでも、地域に溶け込むまでに、5年ぐらいはかかったかな。農ライフを始めてから、友人もたくさん訪ねて来てくれて、そうなると泊まるところが必要だよね、となってキャンプ場とかコテージを作ったんです。でも、宿泊施設だけだったら近所の人は泊まりに来ることはないですよね。それで石窯ピザのカフェを週末だけオープンしたら、地元の人が来てくれるようになって、それがすげぇよかったな、と。カフェが“場”になっているんです」

 

いかにハッピーを生みだせるか、アホでいられるか

「ここでキャンプ場やカフェを始めるとき、地元の人の商売敵にならないように、まわりの状況をよく見て考えました。この辺だったら近くにキャンプ場がない。だったらキャンプ場作っても大丈夫だね、とか、近くに石窯ピザ屋さんがなかったからOKだよね、とか。6年ぐらいいたら地域のこともいろいろわかってきたし、狭い島なんでそういうことは慎重に考えて行動しました。かぶらないほうがみんなも応援してくれるし。自分たちだけがよければいい、というのではなくて、まわりの人たちも含めて、農業も宿も店もいかにハッピーを生んでいけるか。それがないと、広がらないし継続できないと思うんですよね」

「ベースに“農”があるので、それがおろそかになるのがいやだから、カフェは週末しかやっていません。冬場はカフェも宿泊施設も休業していますが、11月まで毎週土曜日に35人は泊まってましたね。週末になると、キャンプ場に10テントぐらい並んで、コテージやゲルにもお客さんがいて、その日だけの村みたいになるんですよ。夜、キャンプファイヤーのように薪に火を点けてあげると、みんな集まってきて、知らない人同士が顔を合わせる。こどもたちが友達になって、お母さんたちが連絡先を交換して、っていうのを見ていて、わー仲良くなってる、すげぇいいなぁって(笑)」

僕にはバイブレーションチェッカーみたいなものがあって、あ、この人今日は元気だな、とか、波動のリズムがよくないな、とか、そういうことを感じるんです。みんなのマインドとかバイブレーションとか、そういうのを調整していくのが、村長としての役目だと思っているんです。いい流れになっていってほしいし、たくさんの人が来てくれて、僕らのやっていることを見て、それを参考にしてくれたらいいなと思います。そのためには、商売がちゃんと成り立っているとか、カッコいいとか楽しいとかがないと、モデルにはなれないですよね。とにかくいちばんアホでいたいんですよ(笑)」

MUDO(菜音ファーム&菜音キャンプ 村長)
兵庫県淡路市/菜音ファーム&菜音キャンプ

その昔、東京の六本木や渋谷でCLUBを経営していたが、震災を機に家族で淡路島に移住。無農薬の有機農業を志す。移住当初は地域になかなか受け入れてもらえなかったところ、農業や漁業のアルバイトを複数掛け持ちしつつ、自分たちの農法を有機農法と呼ばず「お金かけない農法」と呼んで様々な実験を繰り返していくうちに地元の人々にも認められるようになってきた。今では宿泊施設の経営や農業体験スクール、野外音楽フェスなどの事業を組み合わせながら、仲間と共に充実した農ライフを送っている。

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