農ライフマインド学

情報更新日:2019/08/26

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なりわいとしての“農業”ではなく、豊かに生きるために“農ライフ”がある

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MUDO村長の農ライフは、基本的に自給自足の実験的生活。

家族や仲間を幸せにするために“農”があり、育てた作物は自分たちが食べる分と運営しているカフェやキャンプ場で使用するもののほか、仕事を手伝ってくれた人への報酬の代わりとして物々交換のようなイメージでエネルギー交換に使ったり、必要としてくれる人たちからの注文を受けて、個人宅配やレストランへの発送を行っています。

淡路島で家族や仲間10人と共同生活を行う菜音ファームでは、実際にどのような活動が行われているのでしょうか。コミュニティーという面から見たMUDO村長の“農”哲学に迫ります。

誰も貸してくれなかった畑。今では手が回らないほどの規模に

「僕が農業に興味を持ったのは淡路島に移住する前で、今から11年前のことです。その時に初めて農地法とか知るわけですよ。

畑を借りたくても貸してくれる人がいなくて『畑って、一般人には誰も貸してくんねぇんだ』と落胆しました。幸いにも長野の友人が畑を貸してくれることになって、3年ほど東京から長野へ通いながら畑をやっていたんです。

当時は知らないことだらけで、どんどん調べていくうちに、農業って暗いことが多いんだなぁと思うことが多々ありました。

たとえば、納豆や味噌、醤油なんかは日本人の生活には欠かせないものなのに、原料の大豆はほとんどが輸入に頼っているということ。『日本の食料自給率ってこんなに低いんだ』とか、『日本て農薬こんなに使っている国なの』とかいろいろ知るうちにどんどん農業にはまっていったんですよね」

「淡路島では3畝の小さな畑からのスタート、そして耕作放棄地の開墾の日々でした。移住したてで生活のためにかけもちでアルバイトをしていた時に、行く先々で『畑をやりたいんです!』と言い続けていたら、『うちの畑を貸してやるよ』『軽トラやるよ』『この農機具やるよ』という人がポツポツ現れて、8年たった今は2町歩の田んぼや畑を借り、4反の農地を取得し果樹園もできるようになりました

お米、大豆、たまねぎ、にんにく、しょうが、バジル、サニーレタス、バターレタス、ブルーベリーなど、年間で20〜30種類ぐらいの野菜を作っています。高齢化が進んで手が回らなくなった畑を借りたりしていると、ありがたいことに他の人から『うちの土地も借りてくれ』なんて言われるんだけど、手が回らなくてお断りしているような状態です」

 

お金かけない農法だから、農薬や化学肥料はやらない

「僕らのやりかたは“お金かけない農法”。それって何かっていうと、淡路島にある自然のものだけでやる、ということなんです。

お米はいっさい何も入れずに作っています。基本的には自然栽培です。自然農とか不耕起で作物を作るやり方とはまた少し違って、作物によっては有機質肥料を自分たちで作って入れている畑もあるんですよ。

たとえば、たまねぎには竹をパウダーにして1カ月間嫌気発酵(酸素に触れない状態で微生物を活動させ、有機物を分解させる方法)させて、そこに米ぬかを加えたものをぼかし肥料(※1)として使っているんです。

なるべく自分たちの手で作ったものを活用して、なるべくお金をかけずにやっていく。それが僕らの農ライフです」

「農薬を使わないから、夏は虫にやられてしまって失敗もあったし、じゃがいもを収穫しようと思ったら、いのししに全部食べられていたことも。除草剤も使わないから畑に草がボーボーに生えているし、近所の人たちから『変わった奴らだな』って思われています(笑)。だからみんな興味津々でよく様子を見に来るんですよ。畑に行ったら軽トラが止まっていて『お前らなんでこんなに草がすごいんだ? なんで除草剤使わねぇんだ?』ってスゲー聞かれるし。『クスリはやらへんねん。そのほうが高く売れるねん』みたいな (笑)。

農薬を使わないから夏は虫にやられたりあるけど、寒い時期なら虫の心配もないですしね。季節で作りやすい、作りにくい作物とかがやっと見えてきた感じです。

まわりの人たちに自然栽培や有機栽培の価値について説明するのは難しいけれど、僕らは地域の集まりにも積極的に参加していますから、コミュニケーションはバッチリですよ」

「手作りでオーガニックなカフェ」の野菜は、音楽と深くつながっている

「露地の畑のほかにガラスハウスも2棟借りていて、ふだん農作業する時には音楽をかけながら仕事をしています。

僕らはみんな音楽が好きだから、ガラスハウスにまずスピーカーを運びましたよねぇ(笑)。このくらいのスピーカー(サウンドシステム)をガラスハウスに入れて、音楽聞かせながら野菜を作っているのって、日本中でもきっとうちだけだと思う(笑)。

音楽も野菜も、波動とか微生物など見えないものの、ちからが影響していると思うんです。音楽を聞いて野菜がおいしくなるわけじゃなくて、作っている人間が楽しいと、そういうのが植物に伝わるんだと思うんですよね。

ガラスハウスでは企業さんとか大学とか、何人かの異業種の人たちが集まって実験もしているんです。

プロトン水(水を電解させ、分子レベルに解離させた水素水。土のなかの活性酸素を除去する効果が期待できる)を使っていて、同じ日に種を蒔いても地下水で育てたもの、プロトン水を使ったものでは全然生育が違うんですよ。畝ごとに土壌検査とか、できた作物の糖分分析もこれからやっていこうとしているところなんです。

ここでは、水菜系やルッコラ系などが入っている有機種子や固定種のミックスリーフをサラダ用に栽培しています。ミックスリーフは1カ月ぐらいで収穫できるので、2週間毎に種を蒔いてカフェのメニューに使うんです。焼き上がったピザに野菜をのせて、その上に大豆から作った自家製のソイネーズとドレッシングをかけて食べてもらっています。

なるべく手作りなオーガニックなカフェというのがコンセプトなんで、できる限り野菜から手作りしトマトソースやジェノベーゼソース、ドレッシングも自家製で作っていて、玉ねぎやにんにくもカフェで使いますし。畑や田んぼや海など農ライフでいただいた恵みでカフェのメニューをみんなで考えて提供し、表現しています」

 

農家は全員リスペクト!

「作物は、基本的に仲間の10人が豊かに暮らしていくために作っているので、自分たちが生きるために必要な分とかカフェや宿で使うもの以外はお金にするか、物々交換のようなエネルギーの交換に使うという感覚です。

うちのまわりだと、道の駅とか産直マーケットに出すと価格で負けてしまうんですよね。悠々自適のおじいちゃん農家が、道楽みたいな感じでトマトなんか80円ぐらいで出されちゃったら敵わないですもん。産地の人たちはオーガニックかどうかより、やっぱり値段で選ぶってところもありますよね。だったら僕らはそこへは入っていけないなと思うんです。

だからどうしているかというと、うちと契約してくださっている個人や法人、レストランなど、月50〜100軒ぐらいに宅配で発送しているんです。そのうち年間契約のお客さんは30軒ほどで、隔週で月2回か月1回程度お送りしています。

東京時代の仲間や、ここにキャンプに来たりカフェに来てくれた人、マルシェイベント“島の食卓”に来て、つながってくださった方もたくさんいらっしゃいます。淡路島のとれたてオーガニックセットとして、野菜を10〜12品ぐらいセットしてクール便で送るんですよ。

やはり顔が見えていて繋がっている方々に送るのでご意見や感想をダイレクトに聞けること、コミュニケーションがとれることが大事です。誰のために作っているかを感じることも大切」

「そのほかにも、淡路島にベトナム料理屋さんがオープンして、そこで使いたいからパクチーを作ってほしいと依頼されて作ったり、東京のレストランにも出荷しています。

栽培期間中は農薬・化学肥料不使用ですが、僕らはあくまで、お金をかけず愛情はたっぷりにこの島で手に入るもの、自然なものを活用して持続可能な循環型の農ライフをめざして日々実験しています。あまり◯◯農法って強調したくはないんですよね。慣行栽培で農薬を使っている人をディスるみたいになるのもいやですし。

いろんなやり方をやっている人たちとも仲良くなりたいんですよ。みんなハッピーでやっていけたら、それでOK!農家さんはそれぞれすごいことをやっています。全員リスペクトですから!

今後の日本は、少子化や高齢化などで耕作放棄地が増え、農にかかわる人も減り食物自給率も下がるといわれている時代です。だからこそ若い世代が農ライフって、家族や仲間(コミュニティー)と生活し、楽しく格好良く美味しく食べられて最高じゃん、て思える成功モデルをみんなで創っていきたいと思います。全てに感謝」

※1:米ぬかや油かすなどの有機質肥料に土や籾殻を混ぜて作るので、肥料の成分を薄める、という意味で「ぼかす」という言葉が使用されている。有機質肥料は土に混ぜてから微生物に分解されてはじめてその効果が発揮できるため、作物に影響を与えるまでに時間がかかるが、ぼかし肥料はあらかじめ発酵させることで、比較的短期間のうちに結果が出やすい。

MUDO(菜音ファーム&菜音キャンプ 村長)
兵庫県淡路市/菜音ファーム&菜音キャンプ

その昔、東京の六本木や渋谷でCLUBを経営していたが、震災を機に家族で淡路島に移住。無農薬の有機農業を志す。移住当初は地域になかなか受け入れてもらえなかったところ、農業や漁業のアルバイトを複数掛け持ちしつつ、自分たちの農法を有機農法と呼ばず「お金かけない農法」と呼んで様々な実験を繰り返していくうちに地元の人々にも認められるようになってきた。今では宿泊施設の経営や農業体験スクール、野外音楽フェスなどの事業を組み合わせながら、仲間と共に充実した農ライフを送っている。

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