講義の説明

情報更新日:2018/06/26

豚さんから学ぶ次世代農家の畜産学

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広島県の東部に位置する福山市。ここに豚肉の脂の口どけとは思えないほどなめらか肉質の豚を、こだわりの飼育方法で育てている牧場があります。

福山駅から車で約15分。たどりついた日本畜産株式会社の瀬戸牧場は、住宅街を抜けた小高い坂を登ってきた先。「豚をたくさん飼っている大きな牧場が、こんな所に位置するものなのか…」と思ってしまうような場所にありました。

日本畜産株式会社は、創業55年の歴史を誇る畜産の会社です。

直営牧場での豚の繁殖・生産から、ハムやベーコンなどの食肉加工、素材にこだわった手作りチルド惣菜加工、精肉の卸し販売やアンテナショップの経営とオンラインショップまで、畜産にまつわる食の事業を展開しています。

その自慢の豚を飼育しているここ瀬戸牧場では、約300頭の豚たちがある特別な飼育環境のもとに育てられています。

第一のこだわりは、豚が毎日食べる餌を甘酒のようなスープ状の発酵飼料に加工した独自の「エコフィード(リキッドフィード)」。この飼料を作るために、専用の機械を24時間稼働させて、常に新鮮な飼料を豚たちに与えています。発酵した飼料は、人間の体と同じように豚の腸内環境を整えることから、とても良質な脂のお肉になります。

第二のこだわりは、豚たちが自由に走り回ることができるほど広い「放牧肥育」。一般的な養豚場は、ほとんど身動きがとれないほど狭い豚舎で密飼いされています。狭い場所で運動もできずに体を動かせない分、短期間で肉付きがよくなるためです。しかし、そんな環境で育つ豚たちの精神的ストレスは考慮されていません。瀬戸牧場では、より美味しいお肉を消費者に届けるために、手間も倍以上かかるとわかった上で、豚たちがのびのびと心地よく育つ飼育方法をとっています。

生きていくための糧となる『食』(リキッドフィード)、生きることを楽しむための『遊び』(放牧肥育)、そして、最後に整えてあげるのは豚たちの『寝る環境』です。「バイオベッド」と呼ばれる特別な寝床には、一面にバーク材(木のチップ)が敷いてあります。このバーク材の中にいる微生物が排泄物を吸収・分解してくれるため、驚くなかれ、この牧場では豚舎特有のあのキツイ匂いがほとんどありません。ふかふかのウッドチップが敷き詰められて広々とした環境で育てられた豚のお肉。これは自然と美味しくなるはずです。

そしてなにより、この牧場で特徴的なのは、異常なほどの豚との距離の近さ。まさに”鼻と鼻を付き合わせる距離”で、豚たちと毎日コミュニケーションを取る従業員たちの姿を見たときに、あのムツゴロウさんを思い出しました。

鼻と鼻を付き合わせる距離と書きましたが、今回の教授である瀬戸牧場の牧場長・小林太一さんは、もともと動物が苦手でまったくの素人から養豚業にたずさわったとのこと。
それがいまや県内の高校で養豚現場の話をする講演に呼ばれたり、東京の有名ラーメン屋でもここの豚肉が使われたり、2017年にはメス豚だけで作られる”瀬戸のもち豚せと姫”が福山ブランド認定になったりと、さらにその認知度が上がってきています。

この講義では、瀬戸牧場の牧場長・小林太一さんから、こだわりの豚の飼育方法と豚とのコミュニケーションをはかることの意味、さらに小林教授が培ってきた仕事に対する向き合い方について、熱くお届けしていきます。

小林太一
広島県福山市/瀬戸牧場長

”瀬戸のもち豚せと姫”を生産する日本畜産株式会社・瀬戸牧場の牧場長。養豚業は6年目。 飲食業から養豚業に入ったときは全くの素人からのスタート。それが故に”鼻と鼻を突き合わせた距離”で豚との毎日を過ごし豚たちから多くのことを学ぶ。自家製の発酵飼料である”リキッドフィード”と”ストレスフリーの放牧肥育”で県内で唯一無二の豚肉を生産。2017年に瀬戸牧場産の”瀬戸のもち豚せと姫”が福山ブランド認定を受賞。より美味しい豚肉の生産とともに若者が輝くことのできる職場づくりを日々実践している。