講義の説明

情報更新日:2018/05/22

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地域の未来を切り拓く自伐型林業のすすめ

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自分の身のまわりにある自然の中で、ピラミッドの一番上にあるものは何だろう?と考えてみると、山にたどりつきます。お米や野菜などの作物は、太陽の光と雨のおかげで育ちます。その雨がたっぷりしみ込んだ土があるのは山です。そこから私たちが暮らしている山下に水が流れ、やがて川へと下り、さらにそれが海へと流れていく。そう考えていくと、山にある環境を守っていく・活かしていくことは私たちの生活に大きく関わっています。

日本は国土面積の約67%が森林で覆われているほど緑が豊富な国です。そのなかでも面積における森林保有率が日本一高い県は四国の高知県。なんと県土の84%を森林が占めています。高知の主な林産物として木材や薪炭・きのこ類などがありますが、その山を守る・育てる仕事の代表に『林業』があげられます。

中嶋さんが林業を知ったきっかけは、NPO法人「土佐の森・救援隊」の活動に参加したことからはじまりました。その当時、河川の再生活動をはじめ、棚田保全・焼畑再興等を通じて地域づくりや環境保全活動に力を入れていた中嶋さんは、「中山間地域を再生していくには環境保全や中山間地域農業やグリーンツーリズムだけでは不足な気がする」と感じていたそうです。そんなとき、ちょうど「土佐の森・救援隊」の自伐型森林ボランティア活動に出会いました。 

森林ボランティア活動では、その道の専門の人たちでないにも関わらず、本格的にチェーンソーで木を伐り、伐採した原木の搬出・出荷までやっていたのです。その光景を見た中嶋さんは「林業は大規模な専門家にしかできない取り組みではなく、一般の人にも応用可能なものかもしれない」とあらたな可能性を感じ、深く林業の世界に入っていきました。その後、高知の仁淀川町で中嶋さんが関わる木質バイオマス事業の取り組みがはじまり、その事業の成功から広く全国的に彼の名が知れ渡るようになりました。 

中嶋さんが影響を受けたのは、林業を知るきっかけになった「土佐の森・救援隊」の発起人でした。自分の所有している山の整備・管理・原木出荷などのすべての作業を自らが行っているサラリーマン型の自伐林家だったのです。この方の影響もあり、中嶋さんは、『森林組合などの大規模な専門家しか参入できないものではなく、山林所有者や地域住民の方々が林業の担い手となり、十分な収益をあげられる自伐型林業』を提唱しています。

業界的には「いまの時代に林業は儲からない」というイメージが先行し、全国的に山林の放置の問題が深刻化しています。その対処策として、国が高額補助金を大きな組織に拠出することにより、山を集約化させ、大規模な施業による間伐や皆伐が中心となっています。その結果、補助金が受け取れる団体への独占化が進み、地域から林業が切り離される現象が加速し、山林所有者や地域住民が森林に関わる意欲を削いでいます。最近では盗伐問題も表面化しています。また急峻な日本の森での大規模施業化は豪雨が頻発する現在、土砂災害誘発や持続性喪失する森林の増加が新たな問題として表面化していますが、実際に中嶋さんが培ってきた自伐型林業のスタイルで実践してみると、平均的な50年生の人工林の間伐でもある程度の収益があげられることがわかり、10年毎に間伐を繰返す多間伐施業に移行できれば、次の間伐からは補助金なしの自立した経営に持ち込めることもわかってきました。さらに自伐型林業の施業自体が予防砂防や予防治山となり環境保全効果が高いこともわかってきたそうです。

その経験から、中嶋さんは全国の自伐型林業展開を支援するNPO法人自伐型林業推進協会を立ち上げ、日本の森林や林業・中山間地域の再生、地域への人口還流からの地方創生、森林環境の保全と再生のための自伐型林業の普及活動に強く力を注いでいます。

講義では、これからの時代に合った自伐型林業の可能性と、特別な人だけが達成・成功できる事例ではなく、一般の人でも林業家デビューできる・チャレンジできるような汎用性・再現性の高い林業分野についてのお話や、山の使い捨てではない本当の意味で持続可能な林業の形を追っていきます。

地域の未来を切り拓く自伐型林業のすすめ

中嶋健造
高知県いの町/NPO法人自伐型林業推進協会

NPO法人自伐型林業推進協会の代表理事。林業界のカリスマ。森林率7割+雨の多い温帯地域に位置し、質量ともに世界一の森林資源を有する日本の現状を、自伐型林業で衰退産業化してしまった現行の林業を根本から立て直し、本来の姿(林業と木材産業で100万人就業創出)の実現を目指している自伐型林業運動の牽引者。 愛媛大学大学院農学研究科修了。IT会社、経営コンサルタント、自然環境コンサルタント会社を経て、2003年にNPO法人「土佐の森・救援隊」設立に参画。 地域に根差した環境共生型の林業は、山の所有者等が自分で長期的視点に立った持続的な森林経営を展開できる「自伐」であると確信し、どの地域でも、誰でも、自立できる林業手法として「自伐型林業」を確立。 2014年に全国の自伐型林業展開を支援するNPO法人「自伐型林業推進協会」を立ち上げ、現職に至る。 山林所有者や農家、移住者等の多くの地域住民の主業(年収300万円以上)を自伐型林業で創出し、林業再生のみならず中山間地域再生、中山間地農業の再生、森林環境保全や土砂災害防止・減災等の実践と成果を通じて「世界をリードする森林大国日本」の実現に邁進している。 全国各地での講演会活動も行いつつ、著書に「New自伐型林業のすすめ」や「バイオマス材収入から始める副業的自伐林業」、その他に農山漁村文化協会、全国林業改良普及協会、大日本山林会等の雑誌執筆多数。