講義の説明

情報更新日:2018/02/28

持続可能な農的ビジネス学

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新村さんに初めてお会いしたとき、それまで私が持っていた「酪農家」に対するイメージは音を立てて崩れました。
待ち合わせの時間、私の目の前に現れたのはスーツ姿で自信と覚悟に満ちた表情の「企業経営者」だったからです。
食料自給率が1200%と言われている北海道・十勝エリア。

その十勝エリアにある上士幌町で、道内でたった5%しか行われていないという放牧酪農を実践している「十勝しんむら牧場」の代表取締役である新村浩隆さんがこの講義の教授です。

「農業はやりたくなかった」

小さなころから跡取りとして実家の農作業を手伝ってきた新村さん。高校、大学共に農業系の学校を卒業されていますが、当時は農業をやりたいという気持ちはなかったそうです。

しかし、大学時代にバブル崩壊を経験したことがきっかけで「仕事とはなにか?」を真剣に考えるようになり、たどり着いた答えが「農業」でした。

「牛を牛らしく」

実家の跡を継ぎ、酪農家になることを決めた新村さんは、大学在学中にこれから自分が取り組むべきビジネスにおける明確なビジョンを作り上げていました。

大学時代に訪れたニュージーランドの牧場視察や、ゼミでの研究から見えてきた日本の酪農の現状。「このままではいけない」という思いで新村さんが描いたビジョンは、それまで行われてきた牛の管理に多くのコストを必要とする「繋ぎ飼育」から、北海道内でもたった5%しか行われていない「放牧酪農」への転換でした。

良い土と、良い草を作り、放牧することによって「牛を牛らしく」健康的にそだてることができる放牧酪農は、環境にもビジネスにも無理なく自然な循環作ることができると新村さんは言います。

さらに放牧酪農に転換したことで牧場の風景も一変。元気な牛たちが緑の草原を自由に歩き回り、誰もがイメージをする美しい北海道の牧場風景を作り上げることができたのです。

「農業の一番弱いところはプライシングできないこと」

いくらコストをかけて良いものを作っても、農協に出荷する現状の仕組みではそれが評価されません。適正利潤をきちんと確保し未来に投資するためには、自分たちで価格を決めることが重要です。そこで新村さんは、自分たちで作った牛乳を使用した商品を開発し、「加工・販売」までを一貫して行うというビジョンも学生時代からすでに描いていました。今では看板商品である「ミルクジャム」をはじめ複数の自社製品を販売しています。

「一企業として存続し続けるために」

この講義では、農業だからという線引きをせず、一企業として価値を生み出し、持続可能な社会の実現に向けて事業に取り組む「農的企業経営」について、新村さんがこれまで歩んできたストーリーを辿りながら学んでいきましょう!

新村浩隆
北海道上士幌町/有限会社十勝しんむら牧場 代表取締役

北海道でたった5%しか行われていない“放牧酪農”を実践する有限会社十勝しんむら牧場の代表取締役。食料自給率1200%の農業大国“北海道・十勝エリア”で、土づくり、草づくりからこだわり、放牧酪農で健康的な牛を育てている。「農業だから」という線引きをせず、企業として存続し続けるための明確なビジョンを示す経営者。農業と食を通して、持続可能でハッピーな未来を創造すべく事業に取り組んでいる。趣味はスノーボードやキックボクシング。人生目標の1つは、「100歳で100m走の世界記録を作る」こと。